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◆セビロが現れる以前の紳士の服装は、映画や絵画、貴人の肖像画などで見るように、いまでは考えられないほど体に密着したものでした。その名残は現在でもモーニングコートやイブニングコートに見ることができます。
◆結婚式やお葬式に着るモーニングコートや、オーケストラの指揮者の着るイブニングコート(燕尾服)をみると、背中の上部の両脇に丸い縫い目がありますね。またウエスト位置のところに、背中から前端まで横方向の縫い目があります。この二つの縫い目は、服を体に密着させるためにつけられたもので、1800年代の遺物がいまなお時代を超えて生き残っているのです。
◆しかしこの二つの縫い目は、礼服には生き残っていますが、普通のセビロには消えてしまっていて、いまでは見られません。
◆1800年代中ごろになって、それまでの体に密着した窮屈な服に代わって、緩やかな着心地のものが登場しはじめました。体に密着させるための二本の縫い目がなくなり、ラウンジスーツと呼ばれました。現代の紳士服はこれが進化したものとされています。時代の移り変わりにつれて緩やかで快適な着物が人びとの間に求められはじめたのです。
◆この変化に影響を与え、ラウンジスーツの登場の素地となるような事件が起こりました。1789年に起こったフランス革命です。この運動は別名をサンキュロット革命とも言います。サンキュロットとはくるぶしまでの長さをもつズボンのことで、キュロット(脚に密着した半ズボン)をはいた貴族社会に対して、長ズボンをはいた労働者階級が起こした運動でありました。
◆この丈の長いサンキュロットは、ひざ下までのキュロットに比べて格段に作りやすく安価にできたうえに、はき心地も緩やかで快適でした。この快適さの体験が、のちのラウンジスーツを生み、それを受けいれる下地となりました。労働者階級の革命運動が紳士服にも一大革命をもたらしたのです。
◆現在の紳士スーツの規範は1920年頃に英国において確立されましたが、これは別の機会にとりあげることにします。
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